「お父さんも見守ってもらったよ」―。愛媛県の松前町北黒田の塗装業矢野正次さん(78)は約44年間、地元の松前小学校の通学路で、児童の交通安全に目を光らせている。親子でお世話になった児童もおり、学校関係者らからは町の偉人になぞらえ「現代の義農作兵衛」と感謝されるが、矢野さんは「子どもたちにパワーをもらっている」と笑顔を返す。
 矢野さんや伊予署によると、見守りを続ける場所は、児童の7割以上が通学で利用する学校近くの県道交差点。見守りは、1971年に町に交通指導員制度が導入されたのがきっかけ。「地域の役に立ちたい」と当初は月に数回、別の場所で行っていたが、今の場所がより危険と気付き、毎朝の習慣になった。
 登校日の午前7時15分~8時ごろの間、指導員の制服姿の矢野さんが旗や笛で通行車両に合図を送り、最後の1人が通過するまで児童の安全に心と目を配る。今ではドライバーにも知り合いができ、通学していない児童に気付くほど地域に溶け込んだ。